道標
スペインはロンドンより西にありながら、多くのヨーロッパの国と時刻を合わせているため、夏時間で日本と比しマイナス7時間の時差(GMTは-9時間)です。9月の朝6時は真っ暗で7時50分ころ漸く日が昇ります。
だからといって多くの巡礼者は日が昇るのを待って出発しません。スペインの日中の暑さがとんでもないからです。
私が、ロンセスバージェスのアルベルゲを出たのが朝6時。前日、ルートの入り口は確認していたので、出だしは問題ない。国道に沿った林のなかの道を頭に付けた明かりをたよりに進みます。
しかし、わかりやすい道が延々続くわけではありません。巡礼路は曲がり角に差し掛かったとき、おおむね迷わないように矢印がついた貝のマークがあります。これが必ずしも分かりやすい場所にあるとは限らない。
歩き出して20分ほど暗がりで判別しがたいところがありました。すると、後ろから複数の英語が聞こえます。アメリカ籍のカップルでした。かれらがすぐさま矢印を見つけてくれました。巡礼者はみな同じ目的で、同じ方向を向いているので助け合うのです。
エスピナル(Espinal)
ロンセスバージェスから8㎞ほどの街です。休憩したいタイミングで現れます。
スビリ(Zubiri)の道
スビリはロンセスバージェスから24㎞ほどの街で多くの巡礼者はここで宿をとる方が多いようでした。そこそこのまとまった街でしたが、スビリで印象があったのが、その少し手前の道の悪さです。
この近辺の地層は層を成した花崗岩が褶曲によりねじ曲がり横になって地層がむきだし、これが路面となっています。ミルフィーユのように重なった層はクリーム部分がそがれ、堅い部分が歯のように突き出しています。
よって、道路は以下の写真のような状態となっています。層と層の厚みがちょうど靴の幅くらい。ピタッと靴がはまるところもあり、足をどこに置いたものか、と躊躇しながらバランスをとり歩くという状態です。登山を思えばまあこんなものかと思えますが、巡礼者によっては難所の部類でしょう。
カミーノ巡礼者は自転車で巡礼するかたも多数いましたが、ここでは大概下りでありながら自転車をかかえて下りざるを得ないという道でした。
アルベルゲ
アルベルゲは巡礼者用の宿舎で、一部屋で多くの人が宿泊するドミトリー形式です。ほとんどが2段ベッド、よほど大きなところでなければ男女兼用が基本です。
2段ベッドを利用したことがあるかたは分かりますが、きしみます。一方、巡礼者は朝5時に起きる人や、9時まで寝るひとなど活動がばらばら、荷物のパッキングなどはどうしても音が出て揺れます。気にしない人は気にしませんが、結構気を使います。
巡礼者は昼の2時前後に到着するかたが多いように思えました。それは巡礼者は連日長い距離を歩き傷んだ足をケアする必要があること。巡礼者の荷物は限られているため、特に衣類は限定されているため毎日洗濯しなければならないということ。洗濯はタイミングを逃すと乾かなくなるので休んでる暇がないのです。つまり、ゆっくり休んでいる人ほど汗かいても同じ服を着ているということです。
アルベルゲの名称はそこの地名を冠している場合もありますが、同じ名前がついたアルベルゲも結構見受けられます。ひとつはムニシパル(municipal)自治体という意味で、公営です。アポストル(apostol)という名前も複数ありました。使徒という意味です。巡礼目的のサンチャゴが12使徒のひとりだからです。
ララソアーニャ(Larrasoaña)